クローン病

クローン病について

クローン病について炎症性の疾患で、消化管の口から肛門までどの場所にも炎症や潰瘍が発症する可能性があります。特に炎症が起こりやすい場所は、大腸全域と大腸に近い小腸の回腸末端部です。複数の場所に炎症を来すこともあり、腹痛と下痢が代表的な症状です。他に発熱や貧血、全身倦怠感などがあり、進行すると腸に穴が開く穿孔や狭窄、癒着といった合併症や消化管以外に症状が出ることもあります。炎症が起こる活動期と症状が治まる寛解期を繰り返しますが、寛解期にも進行するため継続的な治療が重要です。なお、活動期には入院が必要になるケースも少なくありません。
治療では食事療法が最も重要で、炎症を抑える薬物療法と合わせて行っていきます。穿孔などが起こった場合には手術が必要になることもあります。
発症が多いのは10~20歳代の若年層で、女性に比べ男性は2倍近い発症率があります。日本では10万人あたり27人程度の発症率とされています。

クローン病の症状

病変のある場所によって症状が異なり、小腸型、小腸・大腸型、大腸型に分けられます。代表的な症状は腹痛、下痢、下血ですが、腹痛や下痢が起こらないこともあります。他には発熱、下血、腹部腫瘤、体重減少、全身倦怠感、貧血などの症状が現れることもあります。狭窄や膿瘍などの腸管に起こる合併症や腸管以外の眼や関節などに起こる合併症もあります。
食事療法と薬物療法で寛解を維持できますが、寛解期にも病気が進行するため継続した治療を受けることが重要です。

代表的な症状

  • 腹痛
  • 下痢
  • 下血
  • 腹部腫瘤
  • 体重減少
  • 口内炎
  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 貧血

合併症

  • 穿孔
  • 狭窄
  • 癒着
  • 膿瘍
  • 癒着にともなう瘻孔
  • 関節炎
  • 眼の炎症疾患
  • 結節性紅斑
  • 重度の切れ痔や痔瘻

など

クローン病の原因

原因はまだはっきりとわかっておらず、遺伝的な要因・細菌やウイルスによる感染症、血流阻害などさまざまな説が報告されてきました。現在では遺伝的な素因に加え、食事や腸内細菌に免疫細胞が過剰に反応して発症すると考えられています。発症リスクを上げる要因として、動物性脂肪やタンパク質の過剰摂取、喫煙などがあります。
原因がまだよくわかっていないことから完治に至る治療法がなく、国の難病指定を受けていて助成対象になっています。

クローン病の検査と治療

クローン病の検査と治療同様の症状を起こす腸炎はいくつもありますので、感染症ではないかなども考慮して診察します。内視鏡検査や小腸造影を行って特徴的な病変の有無を調べ、内視鏡検査時に採取した組織の生検を行うこともあります。潰瘍性大腸炎とクローン病はどちらも難病指定された炎症性の病気であり、症状や所見が似ていますが治療法は全く異なります。正確な診断のためには大腸内視鏡検査が不可欠です。クローン病は特に厳格な食事療法が必要になりますので、専門医による正確な診断が不可欠です。

治療について

炎症がある活動期には寛解期に導くために厳格な栄養療法を受ける必要があり、入院して治療を行うことも多くなっています。寛解期にはその状態を維持して炎症をそれ以上進行させないよう治療を続けます。食事療法と薬物療法が主な治療法ですが、穿孔などの合併症を起こしているなど進行して重症化している場合には外科手術が必要になる可能性もあります。
症状が治まっている寛解期にも病気が進行しているケースが多いため、継続的に治療を受け、食事療法を続けることが重要です。

食事療法(栄養療法)

病変のある部分や消化吸収機能、活動期か寛解期かなどにより、適した食事内容が変わってきます。

活動期には栄養状態を改善して腸管を安静に保ち、食事からの刺激を取り除く治療として、経腸栄養療法を行います。ただし、広範囲に病変がある場合などには静脈から栄養を補給する完全中心静脈栄養を行います。経腸栄養療法では、抗原性を示さないアミノ酸を中心に、脂肪をほとんど含まない成分栄養剤と少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤から状態に適したものを選択します。
寛解期には、病変部位などにより異なった制限がありますが通常に近い食事が可能です。制限は病変が小腸にある場合には低脂肪、狭窄がある場合には食物繊維の少ない低残渣(ていざんさ)などを用います。病変部位にかかわらず動物性脂肪は炎症を悪化させやすいためできるだけ避けてください。また、食材の合う・合わないは患者様ごとに相性があるため、ご自分に合うものを探していく必要があります。消化器はストレスの影響を受けやすいため、寛解期には神経質になり過ぎないようにしましょう。
食事療法の問題は、厳格な制限を守っているとカロリーやタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが欠乏しやすいことです。そのため、当院では具体的でくわしい食材、メニューのバランス、必要な量、食事のタイミングなどまできめ細かくアドバイスを行っています。

薬物療法

薬の副作用活動期には5-アミノサリチル酸製薬(ペンタサやサラゾピリン)、副腎皮質ステロイド、免疫調節薬(イムランなど)などを用いて症状を改善します。寛解期にも5-アミノサリチル酸製薬を継続して服用することで再燃を予防します。

5-アミノサリチル酸製薬で効果が得られない場合には、免疫を調整して炎症反応を抑える抗TNFα受容体拮抗薬を用いることもあります。また、薬物療法ではありませんが、血球成分除去療法という血液中から異常に活性化した白血球を除去する治療を行うこともあります。

 

外科治療・内視鏡的治療

胃カメラ(胃内視鏡)検査狭窄や穿孔、膿瘍などの合併症が起こったら、外科手術が必要になる場合もあります。手術後のQOL(生活の質)を保つために腸管をできるだけ温存することが重要です。そのためできるだけ小範囲の切除や狭窄形成術などを行います。また、狭窄に関しては低侵襲な内視鏡を用いた拡張治療が可能です。

 

生活習慣の改善

禁煙

クローン病発症や再燃にかかわっているため、禁煙が必要です。

寛解期

食事制限はありますが、少量のアルコール摂取は問題ありません。
消化器はストレスの影響を大きく受けやすいため、ストレスや過労に注意しましょう。

周囲の理解

クローン病では活動期の入院が必要になることがありますし、寛解期でも食事に制限があります。周囲にクローン病を理解してもらうことでご本人のストレスも大きく軽減されます。

妊娠とクローン病

妊娠とクローン病クローン病は若年層に多く、発症率は男性の半分とはいえ女性の発症も珍しくありません。そのため、女性の患者様では妊娠や出産に不安を覚えることがあると思います。クローン病であっても寛解期に妊娠・出産・授乳を問題なく過ごした方が多くいらっしゃいます。妊娠中も治療を継続する必要がありますが、当院では比較的安全な薬剤を用い、赤ちゃんの成長に十分な栄養を取れるよう食事療法に関してもしっかりサポートしています。なお、妊娠を考えている時点でご相談いただくことがベストです。
また、授乳に関してですが、服薬中のクローン病薬剤が母乳に移行する量は極めて少量であるとされています。ただし、できるだけリスクが少ない方法をとることが重要ですから、母乳哺育をお考えの場合には事前にしっかり説明を受けてください。

TEL:027-372-8060
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